冬を踏む
一夜で白銀となった景色はけれど、その色同様に私の心までは白くしてくれなかったのだ。
肌に当たる風が痛くなってきて、思わずマフラーに顔をうずめたりなんかするけれど、結局上手に歩けなくて前を向く。寒さに体が緊張して肩が上がってしまうから、家に帰ると自然と弛緩する。
もったいなくてストーブはつけず、慰めの毛布一枚にくるまって夜を過ごす。
テレビの向こう側で鳴っている笑い声が遠く感じで、映像は静止画のようにぼうっと見てしまっている自分に気が付いてコーヒーを煎れる。
踊って消える湯気と共に口にするも、コーヒーの苦みに眉をひそめてミルクを入れる。
気づけば過ぎて、起きればやってくる。
他愛ない、というよりは乾いたスポンジで食器を洗うような日々を送っていくうちに、冬の積雪ごとく思考も積もっていく。
陰気なこの気持ちも、冬を終える頃は溶けてなくなっていればいいのにな。
でも冬の寒さに同化するようなこの頭の冷たさが、今はちょうどいい。