れとろボックス。

日記。その日の心の備忘録。卓上の言葉たち。

 景色が白く、冷たくなっていく。

 しんしんとゆっくり降っていた雪たちはいつのまにか風に煽られながら、吹雪となって冬の夜を飛んでいた。

 寒さに体を硬ばらせれば、吐く吐息にレンズが曇る。苛々しながら手で吹いて、また吐いてと繰り返していくうちに手も蝋で固められたように動かなくなってくる。

 全く冬ほどきを感じさせない凍える一月の日、雪道を、仇のように削り走る車の群れは、遅れながらの帰省や仕事終わりなど様々な物語を乗せていた。

 万人も通っていないまっさらな白面に、大きく歪な足跡を残しながら帰路を辿る。

 まばらな間隔で置かれた電柱と、それらを繋ぐ電線に寝転がっていた雪が、暗闇に反応して光る街灯に驚いて落下した。

 夏には嫌になるくらい視界にいた鴉も、あの黒塗りが恋しくなる程度には姿を消していた。虫の音も、鳴き声も聞こえず、そこには生命の休息を感じる静寂が、辺りを跋渉していたのだ。

 雪は死で、雪が死ねば我ら命も生き動く。

 ならば僕も、雪降るこの街にいる間は死人でいても良いじゃないか。

 鬱屈とした、油のように取れない退廃的な心根も、寒さを感じる今だけは、肯定していいんじゃないだろうか。

 耳すませば、静寂しか聞こえないのだから。